マネロン対策と税務の間には,深い関係性と,双方の当局間の共働に対する政策的要請があることが広く認識されつつも,その議論はこれまで未整理の状態であった。本稿においては,そこに今後の検討の深化を図る上で土台となる基本的視座と,議論の枠組みを設定することを試みる。
具体的には,まずかかる議論の迷走の原因を,(1)共働の異なる諸段階に係る議論が未分化であること,(2)それらのあるべき態様を巡る議論における,「連結性の捻れ」が存在すること,(3)特に当局間の情報共有について様々な内容等が混在すること,に求める。
その上で,想定される共働関係を,①リスクの分析・評価(準備),②情報の共有(実働),③犯罪収益の剝奪(事後)の各段階に分解し,更に,このうちで最も中核的論点となる②については,収集時の主観的目的及び提供先の客観的用途によって論点が分岐し,それぞれにつき,関係法令・判例等を踏まえた個別の検討が必要である旨を明らかにする。
最後に,補足的な項目として,マネロンにおける税犯罪の「前提犯罪化」と,没収(犯罪収益の剥奪)に関する議論の整理を行う。
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