本研究では,わが国の江戸幕府における「道路行政制度」のなかで,『徳川実紀』に掲載された「橋梁」に関する事項に着目した.その結果,『徳川実紀』に掲載されていた188事項を江戸幕府による政策ごとに分類した.最も多くの事項が掲載されていたのは「法制度」に関する116事項で,架橋や修理に携わっていた「職掌」,橋梁に異常がないか定期的に巡回を行うよう「維持管理」等が定められていた.次いで多かったのは,「架替および修理」に関する68事項であった.なお,「新規架橋」は「修理・架替」よりも少ない28事項で,約4割程度の記載に留まっていた.このようなことから,江戸時代前中期においては,維持管理に重きが置かれ,新規事業は抑えられていたことを明らかにした.
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