優良種苗確保と需給対策を柱として展開してきたわが国の林業種苗政策のうち、戦後から1960年代に主に展開した需給対策について、その経緯と背景を文献資料により明らかにした。戦後激減していた苗木生産は50年頃には造林需要と均衡するまでに回復するが、種苗の質や需給に関わる問題が起きた。補助等の施策は予算不足で、優良種苗供給は不十分だった。国は51年の計画的需給の通達と種苗配布区域指定により需給対策を開始し、当時の都道府県の需給調整の状況を踏まえ、57年通達で林業種苗法の運用強化を図った後、61年に林業用優良種苗生産需給調整要綱を需給対策の大綱として示した。この間都道府県では、国の指導に先行または追随して、優良種苗確保と需給円滑化に取り組んだ。こうして需給対策は、都道府県の取り組みと国の指導が相俟って展開した。需給調整策は過剰生産を抑制したと見られるも、苗木価格水準は労賃高騰に追随しきれない期間も多かった。
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