隋から唐代にかけての中国仏教において、
仏身
・仏土論特に阿弥陀仏の仏格の判定は、その浄土に凡夫も往生が可能なのかとの問題と絡み、重要な意味を持っていた。そして、中国法相宗の祖である基の
仏身
・仏土論については、従来『義林章』「仏土章」などに見られる通報化説が注目され、これが基の見解であるとされる向きがあった。だが、『義林章』「三身義林」には、複数の経典を根拠に阿弥陀仏報身説を強調する記述があり、とりわけ『鼓音聲経』と『観音授記経』については、基は独自の視点からこれらの経典の阿弥陀仏を報身と判定している。その内容は基が弥勒信仰を勧めるために著した『弥勒上生経賛』と重なっているため、基の弥陀仏格判定には彼の信仰が深く関係していることがうかがえる。本稿は、基が阿弥陀仏に関しては唯報説を重んじており、そこに浄土教とは異なる視点から弥陀報身説を提唱した基の独自性が表れていることを指摘するものである。
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