2022年に (公社) 東洋療法学校協会に電子教材検討会が発足し、 同時期に 「新版 東洋医学臨床論」 が発刊された。 COVID-19の流行を経て加速したInformation and Communication Technology (以下ICT) 教育の推進もあり、 電子教科書のみならず、 経絡経穴や徒手検査の動画教材の作成も行われている。 学校教育において教科書は、 過去の経験や蓄積してきたエビデンスを初学者たちに伝えるツールであり、 鍼灸師となるための道標であると考えられる。 そのため標準的な教育の検討が必要となるが、 経絡経穴の動画作成を試みる中、 体表指標の触れ方、 説明の仕方など教員間で違いがみられることも明らかとなった。 東洋医学は伝統医学として古典を根拠としているが、 古典と現代医学のEBMに齟齬するものは修正していく必要がある。 ICT教育やEBMが注目を浴びる一方、 学生の基礎学力の低下も問題になっている。 鍼灸治療のベースとなる東洋医学概論や経絡経穴概論は、 日常触れたことのない思想や難解な専門用語で成り立つため、 その理解と暗記が必要になってくる。 これを単なる暗記ととらえてしまうと苦手意識につながってしまう恐れも生じてしまう。 このような状況の中、 教育現場では次世代の教育の在り方を模索している。 そこで今回、 次代の鍼灸師へ東洋医学をどのように伝えていくのかをテーマに、 古典に立脚した正しい伝統医学教育の在り方について解説いただいた。 次に経絡経穴を中心としたICT教育の進捗現状や課題について解説いただいた。 最後に学生が苦手意識を感じず楽しく学びながら 「自ら考え実践できる東洋医学」 の授業方略について解説いただいた。 古典 (過去)、 電子教材 (未来)、 授業展開 (現在) の3つの視点から、 東洋医学教育の多様性に対応すべく、 教育内容を検討していく必要があるものと考えられた。
抄録全体を表示