成人精巣腫瘍77例 (非セミノーマ35例, セミノーマ42例) について抗β-hCG血清を作製しこれを用いた間接 immuno-peroxidase 法によりhCG-染色陽性細胞の同定を行ない, 以下の結果を得た.
1) 非セミノーマ症例では, 原発巣に絨毛癌組織を含む1例および他の34例中15例 (44%) に, セミノーマ症例では42例中6例 (14%) にhCG-染色陽性細胞を認めた.
2) hCG-染色陽性細胞は細胞の大きさ, その存在形式より大型多核細胞と小型多核細胞の2型に分類でき, stage I症例においては血清β-hCG値3.0ng/ml以下の6例では小型の, 4.0~174ng/mlの5例では大型の多核細胞が同定された.
3) 原発巣, および転移巣に絨毛癌組織を認めた2例を除く非セミノーマ症例では, hCG-染色陽性細胞陽性群 (15例), 陰性群 (18例) の2年生存率はそれぞれ92%, 88%であり, 同様にマーカーhCG値陽性群 (20例), 正常群 (13例) ではそれぞれ92%, 79%でありともに有意差は認められなかった. セミノーマ症例には死亡例はなかった.
4) 以上より成人精巣腫瘍においては, hCG-染色陽性細胞の有無, そして, マーカーhCG陽性は予後不良因子とはならないものと考えられた.
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