上部消化管内視鏡検査は, 安全で高齢者にも広くおこなわれているが, 検査中に動脈血酸素飽和度 (SaO
2) の低下がおこることが知られている. また内視鏡検査中に著明なSaO
2の低下が出現すると心電図異常や不整脈が出現しやすいことも知られている. そこで, 内視鏡検査が有意なSaO
2の低下をおこすか否か, さらに酸素の投与がこれを予防できるか否かを被検者の年齢別に比較検討した. 対象は, 61歳以上の高齢群44例と, 60歳以下の若年群37例で, それぞれ2群にわけ, 1群には検査中に酸素2
l/minの投与をおこなった. 内視鏡検査中は, 1分おきに血圧, 脈拍, SaO
2の測定をおこなった. 内視鏡施行中に, 基礎値に比較して高齢群では3.3±0.8%, 若年者では1.7±0.4%のSaO
2の低下がみとめられた. また高齢群の酸素非投与群では20例中2例に7%以上のSaO
2の低下がみられたが, 若年群では7%以上のSaO
2の低下を示した例はなかった. 酸素の投与は, 高齢群においても若年群においてもSaO
2の低下を有効に予防した. この結果は, 内視鏡検査中に高齢群は若年群に比較してより著明なSaO
2の低下をおこし, 酸素の投与は, 検査に伴うSaO
2の低下を予防するために有用であることを示唆していた.
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