耳鼻咽喉科領域の異物の分類について述べ, 本邦の古文書ならびに近代文献に報告された耳鼻咽喉科領域の有生異物について検討を加えた.
外耳道より摘出した有生異物372例について種名の同定を試み, 種名を同定し得たものは昆虫107種, クモ4種であり, 科名まで判明したものは昆虫綱66科, 蜘形綱4科であった. 目別の症例数は鱗翅目145, 鞘翅目94, 双翅目32, 半翅目31, 隠翅目16, 総尾目13, 膜翅目10, 直翅目9, 毛翅目7, クモ目7, 革翅目2, 噛虫目2, 蜉蝣目2, ダニ目2, であった. 月別では夏季に多くみられた.
昆虫の外耳道への侵入動機については, 趨光性昆虫の屋内飛来, 屋内昆虫の侵入, 体外寄生昆虫, 潜孔性昆虫, 膿汁の臭に集る場合, 昆虫の棲息場所の移動による場合, 過失による場合, 迷信に由来する場合, 偶然に入る場合が考えられた.
外耳道異物の摘出法について文献に記録された方法について検討を加え, 私の見解を述べた. すなわち, 小型の昆虫の場合は, 鑷子, 鉗子, 耳洗滌法で摘出できること, および大型昆虫で疼痛の甚だしい場合は, オリーブ油などの植物性油で殺してから異物鈎, 鉗子, 鑷子, 耳洗滌法を用いて摘出するのが合理的なことを指摘した.
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