『テリトリー論1』という詩集は、
伊藤比呂美
の詩と荒木経惟(のぶよし)の写真という二つのテリトリーが競合するところにまず生成している。ことに詩集巻頭の数篇、「先天性」「Trip-tych」等は、伊藤の詩が荒木の写真の表現の方法に密着しそこから啓発されるところに生み出されていると見てよい。「父」が主要なモチーフとして選ばれていることもそれと平行関係にあるが、「父」が主役から降りると同時に、
伊藤比呂美
は写真と関わる不自由感を直視して、写真との自由な対話に入るべく言葉のテリトリーの自立に向かってゆくのである。
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