本研究は,阪神・淡路大震災での一般仮設住宅(東加古川仮設住宅,明石市)及び地域型仮設住宅(尼崎・西宮・芦屋・神戸市)を調査対象とし,仮設住宅における時間的経過をふまえた団地管理・運営,居住関連サービス・ケア体制のあり方について検討した。居住者側からの要望・要求の把握,支援者側からみた居住関連サービス・ケアの実態と支援のあり方について検討した。本調査・研究から,以下の点が明らかになった。(1)居住者の要望は,住宅性能の低さ,住環境の未整備に起因する要望,設備面や電気製品等の修繕,部品の取り替え,住宅改造などのハード面や,家事援助,外出支援,書類の代書などのソフト面など,多方面にわたっている。建設後のメンテナンス,修繕,改善などを対応する支援員が必要である。(2)仮設住宅は,入居者構成,コミュニティが大きく変動する。災害救助法には,仮設住宅の時間的経過をふまえた団地管理・運営面,居住関連サービス・ケアのあり方は具体的に明記されていない。仮設居住者の相互扶助は不安定で団地の自主管理は困難であり,公的に持続的に支援するシステムが必要である。居住者の要望を迅速に察知し支援を行なうケアネット・システムが有効である。(3)仮設支援員(ケア連絡員,生活援助員(LSA),サービスコーナー職員)は,従来のシルバーハウジングでのLSAの枠を超えて新たな支援領域を生み出し,居住者に高い評価を得ている。(4)地域型仮設住宅は,その物的な空間と運営システムにおいて,高齢者住宅の新たなタイプを提案している。個人のプライバシーを尊重し,各個人が自立した生活を送ることを基本としながら,高齢者が自分の心身状況に応じて,選択的に生活援助サービスが受けられるというハード,ソフトのシステムを実現している。特に,気軽に集まれる共用スペースの存在と生活援助員が常駐していることによる安心感,きめ細かなサービス提供を入居者が高く評価している。
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