肺は気管支末端に約3億個の肺胞を有し, 呼吸という生命維持に必須な生理機能を担っている。肺サーファクタントは肺胞II型細胞で合成, 肺胞腔に分泌されて肺胞の全表面を覆う脂質-蛋白質複合体(リポ蛋白質)である。サーファクタントの機能発現には, 特異的アポ蛋白質が必須である。親水性アポ蛋白のSP-AとSP-Dは, C型レクチンのコレクチン・サブグループに属する。これらの蛋白質は気道-肺胞系における生体防御作用, 特に, 自然免疫の担い手として機能している。SP-Aは肺サーファクタントアポ蛋白質の中で最も多く存在するアポ蛋白で, 生体防御レクチンとして多彩な機能が明らかにされつつある。SP-Aは, グラム陰性菌, カリニ原虫やインフルエンザウィルス等の病原微生物に結合するとともに, マクロファージとも相互作用を有する。C1q受容体やエンドトキシン受容体(CD14)のリガンドとしても機能し, エンドトキシンにより惹起される細胞応答を制御することも明らかにされた。記憶と特異性によって感染を防御する獲得免疫と違って, 自然免疫は, 感染に対して直ちに反応して, 異物の認識と排除を行う生体防御システムである。近年, HIV感染症, エイズや悪性腫瘍時における獲得免疫の破壊による感染症が増加する中, 臨床医学においてもFirst Line Defenseとして働く自然免疫の重要性が注目されている。
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