近年,進学機会の地域間格差を是正する動きの中で高等学校卒業者の大学・短期大学への進学移動に注目が集まっている。本稿では長野県の4つの通学区を事例に,1990年以降,高等学校卒業者の大学・短期大学への進学移動がどのように変化したのかを検討した。分析の結果,相対的に大学・短大教育の供給の少ない通学区では,県内進学率が低下したり,低水準で推移したりしていることが明らかとなった。また,新幹線が整備され,県外への交通アクセスが向上した通学区では,県外地方圏への進学率が相対的に大きく上昇した。特に,群馬県,新潟県,石川県,富山県といった長野県の近隣県への進学率の上昇がみられた。これらの通学区の高校生が進学先の検討をする際に重要視する,将来の職業,学力,資格,費用,といった事項を考慮できる進学先として,近隣県の位置づけが高まった可能性がある。
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