わが国の住宅景観は、歴史との断絶が進行している。今後は歴史との連続を考慮した景観形成を行うことが望まれる。さらに、その形成は単に規制によるのではなく、住み手の内発的な活動によって作り上げられるべきである。近年多くの自治体で、地域の歴史的資源を再評価し、デザインガイドなどのルールを定めて町並みを誘導する取り組みが行われている。多くの地域は歴史との連続が見えにくくなっているが、その連続の特徴を明らかにすることが、今後の景観形成のために重要であると考えられる。本研究は、開発の波にさらされ歴史の連続が見えにくくなってしまった地方都市郊外の農村集落の現在の民家景観を対象として、混沌とした民家様式を類型的に整理し、歴史との連続性を考察するとともに、規制によらずに伝統的な建築様式を継承する人々の意識を明らかにした。これより歴史と連続した、内発的な、今後の景観形成に資する基礎的知見を得ることができた。
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