現在九州大学心療内科に所属する心理士は4名おり,1名は医学部に所属し3名は病院所属である.心療内科教室には4つの研究室があり,心理士は臨床心理研究室の構成員である.病院所属の3名は院内のブレインセンターで神経心理検査も行っている.心療内科での業務には教育,研究,臨床がある.教育の対象は医学部の3~6年生と卒後の研修医,心療内科に入局した若手医師である.内容は心理検査と心理療法の講義や実習が中心である.入局した医師には,患者の病態仮説の作り方実習と面接の逐語記録の検討を行っている.研究は心理士の専門としている技法やほかの研究室(アレルギー神経生理研究室,慢性疼痛消化器研究室,内分泌研究室)と共同研究を行う.臨床に関して心理士の専門とするところは,医師と相補的な関係にある.医師にも得意とする心理療法があり,心理士にもそれがあり,持ち寄って治療にあたっている.当科の初期の治療では催眠療法による変性意識状態(ASC)がよく用いられていた.自律訓練法や芸術療法にもASCを引き起こす可能性がある.心身相関の自覚に乏しい心身症患者には,ASCを利用して抑圧や知性化が緩んだ状態での治療が有効である.入院を要するような重症の症例ではASCを利用した治療が有効であり,心理士の専門性が発揮されている.
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