症例は31歳, 男性.意識障害, 失禁を主訴に来院, 血糖29mg/d
lより低血糖による意識障害と診断し, ブドウ糖静注にて症状改善した. 低血糖の原因としてインスリノーマが疑われたが, IRI<10μU/m
l, IRI/血糖<0.5といずれも低値であり, 腹部エコー, CT, MRIにて膵に異常を認めなかった. しかしプロインスリンは893pmol/
lと著明高値を認めた. 経皮経肝門脈採血下に腹腔動脈へのCa負荷後, 門脈-脾静脈合流部において著明な|R|の上昇反応を認め, さらに選択的腹腔動脈造影にて膵鉤部に直径約1cmの腫瘍像を認めたことよりインスリノーマと診断した. 腫瘍核出術が施行され, 術後プロインスリンは6.4pmol/
lと正常化を認め低血糖発作も消失した. IRI低値, プロインスリン高値のインスリノーマの症例は稀であり報告する.選択的動脈内Ca負荷も診断に有用であった.
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