はじめに:高齢者胃癌治療は術後合併症の危惧から縮小手術が行われることも少なくなく,特に80歳以上の超高齢者にその傾向が強い.今回われわれは高齢者に対して患者背景,手術術式と術後合併症の相関を明らかにし,今後の治療方針の手助けとなるべく検討を行った.方法: 2000年1月から2004年12月までに胃癌手術を施行した75歳以上の59例に対して,術前併存基礎疾患,術前検査異常と術後合併症の相関を検討するとともに, 80歳未満の35例(A群)と80歳以上の24例(B群)について術後合併症の比較検討を行った.結果:術後譫妄は術前に既往歴がある症例に有意に多く発生し, SSIは栄養状態不良,腎機能障害を併存する症例に有意に高率に発生した.手術因子の中で入院期間,食事開始日は合併症との相関は認められなかった. A群, B群間では患者背景,術後合併症に有意な差は認められなかった.結論: 75歳以上の高齢者胃癌手術症例は,術前併存疾患,術前検査異常を伴う症例が多いが,リンパ節郭清,手術時間などの手術因子と術後合併症の発生や入院期間の延長などの関連性は認めなかった.また, 80歳以上の超高齢者群との比較においても差は認められないため,充分な術前評価と術後管理下のもとに行えば,高齢者であることを理由にリンパ節郭清を手控えたり,根治手術可能例にたいして非根治手術に変更するまでの必要性はないと考えられた.
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