【目的】
骨粗鬆症への関心が高まるなか、我々は第38回本大会において関節リウマチ(以下、RA)における腰椎骨密度と機能障害との関連性を検討し、両者に相関関係を認めることを報告した。しかし、骨密度は短期間の変化を反映しにくい静的な指標である。そこで今回、骨吸収マーカーである尿中NT
Xを測定し、骨代謝の動的な状態をRAの諸要因と比較検討したので報告する。
【方法】
平成12年9月から15年9月にリウマチドックを実施した女性RA患者58名を対象とし、腰椎骨密度、機能障害および進行度(Steinbrockerの基準)、年齢、罹病期間、赤沈値、関節点数、ステロイド使用の有無、運動習慣の有無により対象者を分類し、そのNT
X値(BCE/mMCr)を検討した。
腰椎骨密度、機能障害、進行度、年齢、罹病期間、赤沈値、関節点数については相関係数を、ステロイド使用群と非使用群(各44、10名、平均65.7、66.9歳、使用群1日摂取量2mgから7mg)、運動習慣群と非習慣群(各25、30名、平均69.4、63.0歳)との比較についてはMann-WhitneyのU検定を用いた。
腰椎骨密度はDEXA(Hologic社QDR-2000)により、第2から4腰椎を測定した。測定部位の硬化により測定値が不適切と思われる3例は除外した。
【結果】
NT
X値は腰椎骨密度と有意な逆相関(r=‐.324,P<.05)を示したうえ、機能障害(r=.278,P<.05)、進行度(r=.288,P<.05)、赤沈値(r=.263,P<.05)、関節点数(r=.263,P<.05)に対してもそれぞれ有意な相関を示した。しかし、年齢、罹病期間とは関連性を認めなかった。ステロイド使用群と非使用群(各々75.0、88.8)、運動習慣群と非習慣群(各々73.9、80.7)では有意差を認めなかった。
【考察】
骨吸収マーカーが腰椎骨密度と逆相関を示したのは、骨吸収亢進という動的な条件がある程度継続し、その累積により腰椎骨密度の低下を呈したと考える。また、機能障害、進行度、赤沈値、関節点数いずれも骨吸収亢進に関連性がみられた一方、年齢および罹病期間には関連性がみられなかったことについては、RAにおける骨吸収は多様な経過をみせる疾患活動性に大きく影響されるものと考える。
ステロイド使用群と非使用群に差が見られなかった点は、1日10mg未満では全身性骨粗鬆症の危険因子とならないとするSambrookらの報告を支持するものである。
運動習慣群と非習慣群には有意差は見られなかったものの、運動習慣群に骨吸収が低い傾向が見られ、RAにおいても運動により骨代謝を良好に保つ可能性を示した。
RAの骨密度に関しては、多元的な要因が関与するとされており、今後、骨形成マーカーの測定も含め、さらなる検討が必要と考える。
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