症例は65歳男性.1995年から当科で糖尿病とC型慢性肝炎を経過観察されていた.上腹部痛を伴う37°C台の発熱が約3週間持続するため2004年2月16日当科を受診,腹部超音波検査で肝膿瘍の存在が疑われ入院した.第5病日に経皮的肝膿瘍ドレナージ術を施行した.膿汁はアンチョビ・ソース様で,直接鏡検で栄養型赤痢アメーバが認められ,アメーバ性肝膿瘍と診断,メトロニダゾール内服を開始し,経過良好で第19病日に退院した.入院時のグリコヘモグロビン6.2%, 75 g経口糖負荷試験2時間血糖値263mg/d
lであった.アメーバ性肝膿瘍は,本邦では輸入感染症や性感染症の1つと考えられている比較的稀な疾患である.感染経路は不明であったが,糖尿病や肝硬変の存在は感染症を発症しやすいことから,慢性肝疾患を伴う糖代謝異常を背景として赤痢アメーバの不顕性感染が顕性化した可能性が示唆された.
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