大阪地方におげる大気汚染の植物に及ぼす影響を広域的に把握する目的で、1965年と1965年に1つはアンケート調査により、もう1つは野外調査によって、キンモクセでの開花状況をしらべた。それとともに、花芽形成の1つの条件とみられる炭水化物の含量を同植物の葉についてSomogyi法により測定した.一方1966年にはでチョウの黄葉期における葉の病的な褐変現象等について野外調査を実施した。
1) キンモクセイは近郊地帯においては正常な開花現象をみることができるが、都心部へ向うにつれて花着きが悪化していることがアンケート調査によって確かめられた。
2) さらに、2ケ年にわたっておこなわれた野外調査のの結果、花芽数は都心部の方が相対的に少く、定量的にも花着きの低下が認められた。同時に樹勢そのものも劣っていることが判明した。
3) キンモクセでの葉中災水化物含量は、大阪市域と近郊地域との間に相当はっきりとした差異が認められた。
以上の調査分析の結果から、大阪地方を広域的におおっている大気汚染がキンモクセfの同化機能の低下に関与し、それが樹勢の低下や開花不振をひきおこす原因の1つになっているのではないかと推察される。
4) でチョウの黄葉状況に関する調査結果を、大気汚染地域とみられる大阪市内とその周辺の市外区域とに分けてみると、落葉の遅速にはあまり差がみられない。しかし、汚染地域においては、イチヨウ本来の鮮かな黄葉期に達しないうちに、緑葉のまま異常な褐変症状を呈するケースが多く、とくに市街地街路樹についてその傾向が著しかった。
このような病的現象には、都市気候の特殊性に加えて、大気汚染による慣性的環境悪化がやはり何らかの形でかかわり合っているのではないかとの懸念が持たれる。
抄録全体を表示