日本の鉄道は大量輸送能力や安全性という点で世界トップクラスと評価されており,その要因の一つとして,優れた鉄道車両の開発が挙げられている.にもかかわらず,日本の鉄道車両開発の海外展開は順調に進んでいるとは言えない.本稿では,海外の鉄道事業者向け車両開発プロジェクトにおいて,日本企業が苦戦している実態を記述し,その原因を大型製品システム開発に関する研究の主たるテーマである業務と知識の範囲に焦点を当てて分析することによって,日本の鉄道車両開発を海外展開する上での課題を考察している.分析の結果,日本と比べて開発頻度の少ない海外の鉄道車両開発においては,いかに海外の鉄道事業者や部品メーカーとの信頼関係を構築するか,その上で現地顧客理解能力やサプライチェーン管理能力といった海外の鉄道車両開発で求められる知識の範囲をいかに広げるかが,日本の鉄道車両開発を海外展開する上での課題であることが明らかになった.
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