13歳男性.6歳時に学校検診で心房頻拍を指摘され,当院小児科を受診した.心房頻拍は持続していたが,運動負荷試験において運動耐容能に問題なかったことから経過観察とされ,スポーツを継続していた.しかし,11歳頃より徐々に労作時息切れが増悪したため,心房頻拍に対する加療目的で入院した.緊張や労作で心拍数200回/分前後まで上昇がみられ,入院時の心エコー図検査では左室駆出率41%と低下を認め,頻拍誘発性心筋症の可能性を考えた.各種抗不整脈薬負荷試験を行ったが心房頻拍は持続し,洞結節機能の評価ができなかった.アブレーション治療を行うこととしたが,心房頻拍停止後に洞不全症候群が顕在化する可能性が危惧された.電気生理学的検査において頻拍は右房後中隔起源であった.同部位を詳細にマッピングしたところ,bump現象で一過性に頻拍が停止し,洞調律を確認することができた.頻拍起源に高周波通電を行って頻拍治療に成功した.通電後に施行した洞結節機能評価は正常であった.若年発症の小児心房頻拍は自然軽快例も多い一方,頻拍誘発性心筋症を発症し重症化する症例もある.マッピング技術の進歩等により小児心房頻拍に対してもアブレーションの良好な治療成績が報告されているが,小児特有の経過や合併症の観点から慎重な治療方針決定が必要である.洞結節機能を事前に確認できなかったため,治療判断に難渋した症例を経験したためここに報告する.
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