進行性核上性麻痺では筋固縮が頸部や体幹に強くみられるため,臥位から起き上がって座位になる一連の行動が困難になる.しかし,進行性核上性麻痺を有した対象者が起き上がり動作を学習する過程を詳細に検討した報告は希少である.今回,進行性核上性麻痺によって筋固縮,筋力低下,眼球の下方注視障害,認知症を呈し,起き上がり動作が全介助であった対象者に対して,練習中の失敗経験を少なくすると同時に,適応的な行動に対して必ず賞賛が提示されるように配慮した逆行連鎖法による介入を行った.その結果,介入前に全介助だった起き上がり動作を自力で遂行することが可能になった.また,練習期間中に筋固縮,筋力低下,眼球の下方注視障害,認知症に著明な改善が認められなかったことから,今回の逆行連鎖法による練習は,進行性核上性麻痺の背景にある機能障害自体よりもむしろ,臥位から起き上がるという特定の行動の改善に働いたと考えられた.
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