微量のハロゲン含有医薬品を,簡単な操作で迅速に定量する目的で,原子吸光分析法の適用を試みた.ハロゲン含有医薬品を,(1)イオン性のハロゲンを含むもの,(2)非イオン性のハロゲンを含むもの,(3)イオン性,非イオン性の同種ハロゲンを同時に含むものとに大別して検討を行なった.
イオン性の場合には,そのまま溶液とし,また非イオン性の場合には,常法どおりアルカリによる溶融分解後,水を加えて試料溶液としたものを硝酸酸性(pH約1)とし,これに一定過剰量の硝酸銀を加え,1分間水浴上(60~70℃)に加温したのち,生成したハロゲン化銀の沈殿を濾別する.その濾液中の過剰量の銀を原子吸光分光光度計で測定し,間接的にハロゲン含有医薬品を定量した.
本法のくりかえし精度は,ハロゲン含有量の種々異なった試料について定量し,標準偏差0.15~0.67を得た.Na
+,K
+,Cu
2+,Mg
2+,Ca
2+,Al
3+,Bi
3+などの金属イオンによる影響は,濃度で塩素に対して30倍程度共存しても影響しないことがわかった.また銀と反応する陰イオンのうち,イオウの共存する場合には,溶融分解後のアルカリ性試料溶液に,銅イオンを添加して硫化銅とし,沈殿を除去したのち硝酸酸性にして本法を行なえば,定量することができる.
標準添加法によるhomochlorcyclizine製剤についての回収率は,98.2%であった.
本法により,測定時の最終濃度0.25~1.25μg/m
lの塩素,0.5~3μg/m
lの臭素,1~5μg/m
lのヨウ素を定量することができる.
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