教派神道とカテゴライズされる神道の組織形態が形成された直接的契機は、明治政府の宗教政策に求められるが、個々の教派の形成は、当時日本宗教に蓄積されていたさまざまな宗教的観念・思想、儀礼や実践形態、そして組織形態などを継承しつつなされた。
教派神道の組織形態は大きくは高坏型と樹木型に分けられるが、本稿ではとりわけ高坏型の組織のあり方に注目する。この型の組織における境界線について、教派の指導者層の場合を想定して、脳認知系の研究を参照しながら、組織のウチとソトを分ける際の遺伝的及び文化的に継承された認知の作用を分析していく。文化的継承に影響を受けたものとしては、神道か仏教か、日本固有の教えかそうでないか、文明社会にふさわしい宗教か淫祠邪教かといった認知フレームが作動している。それとともに、仲間で結束するときの遺伝的に組み込まれている無意識的な認知プロセスも作動したと考える。二〇世紀末より脳認知系の諸研究は人文系の研究にも及んでいるが、そうした議論を参照しながら、高坏型の組織に焦点を当て、融合や排除のダイナミズムについて分析する。
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