植栽後まもない若齢林においてスギの枯死率が⾼く極端な気象イベントにより深刻化するおそれがある。適切な森林管理上,スギ苗の環境ストレス応答の理解を深めることが重要である。本研究では,スギ苗への潅⽔停⽌による乾燥処理とその後の再潅⽔処理によって,⼟壌乾燥ストレスの進⾏・回復の過程における水分生理特性とガス交換特性の応答パターンを調査し,再潅⽔しても個体枯死を免れられない
回帰不能点
(point of no return)を明らかにすることを目的とした。⼟壌乾燥によりシュートの⽔ポテンシャル(明け方,日中)が-1.0MPa 以下になると,光合成,気孔コンダクタンス,個体蒸散量が急激に低下した。シュートの⽔ポテンシャルが-3.5MPaまで低下すると,再潅⽔後もこれらの値が回復しない個体が観察され,⽣存率が50%を下回ることが明らかとなった。また,シュートの
Fv/
Fmが0.16,シュートの相対含水率が約50%まで低下し,シュートのイオン漏出率が75%を超えると⽣存率が50%以下になることも明らかとなった。これらの結果は,スギ苗のpoint of no retrunの指標としてシュートの水ポテンシャルや含水率、⽣細胞の活性が重要であることを⽰唆する。
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