Ⅰ はじめに
住民の日常利用に供する市町村立
図書館
は,1つの大規模な中央館を核として,複数の中小規模の分館を配置し,あるいは移動
図書館
を運用することで
図書館
ネットワークを形成することが多い。中村・栗原(1997)は,住民全体の読書量のうち,
図書館が受け持つ割合を図書館
受持率と定義し,市部においては,小規模館はおおむね半径1km,大規模館はおおむね半径4kmの範囲で
図書館
受持率が10%を超えるとする利用圏域モデルを発表した。しかしながら,自家用車の利用が卓越する地域では,距離の制約が緩和され,最寄りの小規模館ではなく,遠方の大規模館を選ぶ傾向がみられる(河村ほか 2008)との指摘がある。
以上をふまえ,本研究では,日本有数の自動車依存型の都市として知られる宇都宮市を事例に,複数の大規模館が選択可能である場合,住民はどの
図書館
を選択するのかを明らかにすることを目的とする。
Ⅱ 研究対象
図書館
と使用するデータ
宇都宮市立
図書館
は,5つの
図書館
と17の生涯学習センター図書室等で
図書館
ネットワークを形成している。このうち,ネットワークの核となる
図書館は中央図書館
であるが,貸出冊数では中央
図書館
・東
図書館
・南
図書館
の3館はほぼ同数であり,宇都宮市域には3つの大規模館が並立する。市内には県立
図書館や大学図書館
も存在するが,本研究は宇都宮市立
図書館
のみ対象とする。
本研究で使用するデータは,2021年度の宇都宮市立
図書館
の新規登録者である。同データは,町丁目別・世代別・登録館別に新規登録者数を集計したものである。
Ⅲ 結果
以下,宇都宮市の16行政地区別に集計した結果を示す(図1)。
中央
図書館
・東
図書館
のある本庁地区と,南
図書館
のある雀宮地区では,9割以上の住民が地区内の
図書館
で新規登録を行った。
中規模館のある市北東部の上河内・河内地区では,地区内の
図書館
での登録が8割を超えたが,より規模の大きな東
図書館や南図書館
での登録者も一定数存在した。
図書館
がなく,生涯学習センター図書室のみが設置されている地区では,地区内にある図書室や最寄りの中規模館での登録者よりも,最寄りの大規模館での登録者の方が多い傾向がみられた。
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