I.はじめに
本発表では,東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)で開発を進めている「デジタル地図学博物館」のプロトタイプについて報告する.デジタル地図学博物館は,インターネットを通じて多数の地図の仮想的な展示を行うための地図画像のポータルサイトである.様々な機関がインターネット上で公開している地図画像の所在(URL)を関連情報とともに整理することにより,それらの地図画像を簡単な検索によって即座に閲覧できるシステムの実現を目指している.現在,基本機能を有するプロトタイプを開発し,運用を進めている.
II.データ収集
インターネット上には多くの地図画像が存在しており,それらの画像へのリンク付けは容易に行うことできる.しかしながら,公開されている画像の帰属や著作権があいまいになるため,プロトタイプの公開に向けて,まず,学術的な地図画像を公開している機関のリストを作成し,各機関に対してリンク付けの許可を取った.次に,許可の得られた機関を対象として,地図画像リストの作成を行い,各機関のウェブサイトにアクセスして,地図画像のURLと関連情報の収集を行った.現時点までに,7つの機関の地図画像に関する情報を収集しており,収集した画像情報の総数は1,146となっている.
III.プロトタイプシステムの設計と運用
デジタル地図学博物館のプロトタイプシステムは,データベースとCGIプログラムから構成され,現在は,Linux サーバ上で動作している.データベースには,地図画像ごとに,提供機関,名称,URL,説明などの情報が登録されている.プロトタイプサイトのウェブページのURLにアクセスすると,プルダウンメニューとテキストボックスを持つページが表示される.プルダウンメニューによって機関を選択し,テキストボックスに検索語を入力すると,CGIプログラムは,データベースに問合せを行い,条件を満たす地図画像の名称,説明,リンク(URL)をリストとしてウェブブラウザ上に表示する.このリスト中のリンクをクリックすることにより,ユーザは容易に各機関のウェブサイトで公開されている地図画像を閲覧することができる.
これらの地図画像のURLは恒久的ではない場合が多いため,データ収集時から時間が経過するとデッドリンクになる可能性があり,今回収集したURLについても収集後にデッドリンクになったものが見受けられる.現在のプロトタイプでは,管理者が定期的に各地図画像の状態(アクセス可能か,デッドリンクか)を調べる機能を有している.
IV.今後の展開
開発したプロトタイプは,デジタル地図学博物館ポータルサイトの基本機能を有しているが,検索や管理の面で改善の余地がある.現在は,単純なキーワード検索しかできないが,より複雑でグラフィカルな検索を今後サポートしたいと考えている.また,地図画像リンクの追加や修正が容易にできる枠組みの整備もしていきたいと考えている.特に,地図画像のデッドリンク検出後,移動先のURLを円滑に登録できる仕組みが必要である.さらに,こうした地図画像の検索機能やリンク管理機能だけではなく,「デジタル地図学博物館」のサイト全体のデザインの洗練や,関連コンテンツの充実も重要な課題である.
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