埼玉県北西部に位置する秩父盆地には,中新統が広く分布している.盆地北―西縁部には最下部層が分布しており,これらは堆積盆地発生期の構造発達史解明にとって重要な地層である.盆地北西縁部には,層厚200 m以上の礫岩層が分布し,角―亜角礫を主体とした,崖錐性と思われるもののほか,円―亜円礫を主体とする礫岩層もみられる.今回,盆地北西縁部の中新統について堆積学的検討を行い,中新統最下部層の堆積過程の復元を試みた.盆地北西縁部に分布する礫岩層には土石流堆積物を含む扇状地性堆積物が含まれ,その堆積期初期には海が進入していなかった可能性がある.陥没によって発生した堆積盆地が,扇状地性堆積物によって埋積されることによって堆積盆地の形成がはじまったと考えられる.
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