日本には古来より多くの偉人がいるが,後藤新平ほど多分野で業績を残した偉人は多くない。医師として,昨今の新型コロナウイルス対策に通じるコレラ対策を成功させた他,医師でありながら,台湾や満州の統治に尽力するとともに,政治家として東京の都市計画構想・震災復興などに貢献してきた。このように,様々な難題に対してリスク回避を行ったり,大都市のインフラを整備するという,異種の両事業を成し遂げた。後藤が逓てい相しょう,内相,外相,鉄道院総裁を歴任した際の数多くの功績もさることながら,関東大震災後の大規模な区画整理を伴う困難な帝都復興は特筆すべきものがある。本報では,これらの功績の解説を通じて,後藤新平がいかに課題を解決しながら都市インフラ整備を進捗させ,またリスク回避に向けてどう戦略をたて,貢献したかについて,その考え方(発想)や手法を分析したものである。
抄録全体を表示