前立腺がん死を減少させる最も有効な予防手段は “早期に発見し, 適切に治療する” という第2次予防である.現時点においては, 第2次予防法として最も優れた手段は血液腫瘍マーカー主導スクリーニングである.我々は早期発見, 適切治療こそが前立腺がん死撲滅に一番寄与するであろうという考えのもとに, 1981年から群馬県で血液腫瘍マーカーによる集団検診を太田地区5市町村で開始し, 2003年の現在は70市町村中, 54市町村 (77%) で施行されている.群馬県は全国でもトップクラスの施行率である.1981年から現在までの20数年の間に, 腫瘍マーカーにも変遷がある.1981年から1991年まではPAP検査を, 1992年から現在まではPSA検査を用いた.我々は群馬県での前立腺がん検診データ解析から, 次のような有用な情報を得ることが出来た.1) PSA based検診は前立腺がん集団検診に最も適した検診システムである.2) 一定以上の施行率で, 長期にわたって検診を続けた市町村では転移がん (病期D) が減ってしまう (病期移動, Stage migration).3) 集団検診群の予後は外来受診者群より優れている.これらの結果は, 前立腺がん検診の有効性を示唆するものである.最近, Bartch教授らが行った前向き時系列研究はPSA検診のがん死減少効果があることを報告したが, 前述したわれわれの疫学研究の結果は彼らの結果を支持するものである.さらに, 本稿においては, 最近5年間に, われわれの教室で行われた前立腺がん検診に関連する研究 (家族性・遺伝性前立腺がん, PSA検査など) についてもsurveyし, 紹介した.
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