詳細検索結果
以下の条件での結果を表示する: 検索条件を変更
クエリ検索: "大森本場乾海苔問屋協同組合"
1件中 1-1の結果を表示しています
  • *長谷部 太一
    日本地理学会発表要旨集
    2023年 2023s 巻 513
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    会議録・要旨集 フリー

    I. はじめに  本研究は,東京都大田区大森地区を中心とするノリ問屋の集積における生産分業のあり方を明らかにするとともに,高度に進んだ分業体制とこれに付帯する地域暗黙知の共有が,産業集積の維持に果たす役割を検討するものである.小規模事業者の生産分業を軸とする製造業に関する研究としては,集積内部の企業間連関における近接立地の優位性を評価した麻生(2016)などがある.また,地場産業に注目した集積研究では,ブランド化による産地の維持に注目した塚本(2013)が挙げられる.一方,本研究が対象とする東京都大田区では,東京湾の埋め立てに伴い1960年代に沖合でのノリ養殖が終了している.このため,原料となる乾ノリを遠隔地での入札に依存している点で通常の地場産業とは構造が異なる.そこで本稿では,大田区のノリ問屋集積における,原料ノリの仕入れを含む産地内での生産分業のあり方に着目し,問屋間での相互補完関係や,分業体制の過程で醸成される種々の地域暗黙知の共有などが,原料産地を喪失した後もなお集積の維持に結びついている点を明らかにすることを目的とする. II. 研究手法  本研究に際しては,主に大田区のノリ問屋への聞き取り調査から情報を収集した.具体的には,2022年8月,10月,11月に,大田区内に立地し「

    大森本場乾海苔問屋協同組合
    」(加盟店舗数48)に加盟する7社から聞き取り調査を行った.主な聞き取り内容は,問屋としての業務,保有する機能,保有しない機能の委託先である.また,産地の歴史や定量的な情報を補完するために,大田区立郷土博物館学芸員への聞き取りや上記組合事務所での資料収集を行った. III. 大田区のノリ問屋集積における生産分業体制  ノリ生産は,原料となる乾ノリの入札と,仕入れた乾ノリを加工(以下,加工品をノリと表記)する工程とに大別できる.まず乾ノリの入札については,東京湾でのノリ養殖が終了した1963年以降,大田区のノリ問屋は,有明海など産地での入札権を持つ一次問屋と,産地での入札権を持たない二次問屋とに分類されるようになった.さらに二次問屋は,産地入札権こそ持たないものの,一次問屋に帯同して落札したい乾ノリを直接指示する二次問屋αと,入札会に参加せず一次問屋が落札した乾ノリを買う二次問屋βに分類できる.このように原料の産地内流通は,一次問屋や二次問屋αのほか,一次問屋が二次問屋βに乾ノリを卸すことで担保されている.  続いて加工機能に着目すると,専ら原料仕入に特化している一次問屋に代わって,二次問屋α・βのほか,大田区内,あるいは隣接地域に立地し,加工工程に特化した問屋が担っている.二次問屋α・βは,問屋毎に担当する工程が異なる.その要因として,贈答用・業務用など販売チャネルの差異のほか,大型加工機械導入の可否など,設備投資能力の差異が指摘できる.他方,各問屋とも自前で保有しない加工機能は,地域内の他の問屋や特定の工程を分担する専門業者へ外注することで補完が可能であり,このことも大田区大森地区を中心とするノリ産業の集積を支える一因となっている. IV. 大田区におけるノリ問屋集積の維持要因  大田区のノリ問屋集積の維持要因は,以下の3点に整理できる.第1は,乾ノリの仕入れにおける一次問屋と二次問屋の機能分担である.一次問屋の数は限られているが,二次問屋αなど産地入札に実質的に関わる問屋は一定数存在している.また二次問屋βを介した乾ノリの産地内への供給は,原料供給を安定させるだけでなく,大ロットでの落札を前提とする産地入札における一次問屋の負担を軽減している.第2は,加工における高度な地域内分業の維持である.このことは,各工程における規模の経済性の維持に結びついている.そして第3は,分業体制を通じて取引先が好みや加工技術などを把握する,いわゆる地域暗黙知の共有である.過去には,問屋間で後継者を丁稚奉公させるなど伝統的な技能の継承,共有も図られており,こうした取り組みの積み重ねが品質を通じた産地のブランド化に寄与している. 文献 麻生絋平 2016.大田区の基盤的技術産業における取引連関. 経済地理学年報62, 229-239. 塚本僚平2013. 地場産業の産地維持とブランド化 愛媛県今治タオル産地を事例として. 経済地理学年報 59, 291-309.

feedback
Top