今回, 著者らは乳牛の蹄病のうち, かなり多発のみられる蹄底疾患に対して, これまでわが国で臨床報告のない木製ブロック装着 (患蹄浮遊) による治療, すなわち, 西ドイツのクルツァー社製テクノビット6091を応用したところ, かなり期待できる治療効果が得られた.
.供試牛は, 限局性蹄皮炎31例, 感染性蹄皮炎4例, 白帯病2例の29頭37蹄である.このうち, とくに支柱蹄の著しい15例を試験牛とし, 患肢蹄の健康側の蹄下面にテクノビット6091を装着し, 他の22例を対照牛とした.
蹄病の処置と包帯交換は, 両群とも治療開始後隔日に実施した. 転帰は, 患部が完全に角質化して疼痛が消失し, 患肢が十分負重に耐え, 歩様が正常となった時を治癒とした.
その結果, 初診時, 対照牛群よりも跛行が重度であった試験牛群の治療日数が平均19.6日であったのに対し, 対照牛群のそれは平均21.5日であった.
また, 試験牛群のうち著効のあった2例は, 釘による穿孔で感染性蹄皮炎を起こしたものと白帯病の症例で, ともに蹄骨にいたる重度の深部感染を伴い, 初診時まったく負重できなかった. いずれも断蹄手術適応症と診断されたもので, 試みにテクノビット6091を応用したところ, 装着後1両日のうちに負重状態が著しく改善され, 連日, 抗生物質の併用によって両者とも治癒した.
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