大阪市では、2012年から大阪にふさわしい大都市制度が議論され、2015年5月には「特別区設置協定書」の是非を問う住民投票が実施された。僅差ではあるが反対多数のために特別区の設置は否決されたが、同年12月には大都市制度の議論が再開された。そして、2016年8月から2017年1月にかけて、大阪市民を対象に総合区・特別区(新たな大都市制度)に関する意見募集・説明会が24回開催された。本研究では、この説明会で説明された内容のテキスト分析を行い、大阪市側が市民に適切な説明を行ったのかどうかを検証した。その結果、事務局の説明は、2015年の住民説明会と比べると改善されたが、市長は不適切な説明を繰り返し説明内容がほとんど改善されなかったことが分かった。そして、市長による説明、事務局による説明、市民の質問に対する市長・知事の回答、配布資料の5種類のテキストの類似性を調べたところ、事務局による説明と配布資料の内容には類似性があるが、これらと、市長による説明、質問に対する市長と知事の回答との間には類似性がないことが分かった。しかも、市長による説明、質問に対する市長と知事の回答は24回の間で変化が見られたが、事務局による説明や配布資料の内容には近づかなかったことも明らかになった。さらに、説明会での市民の意見の内容も調べたところ、特別区は否決済みで再び住民投票を行うのはおかしい、今のままの24区がよいと発言した市民が相当数いたことも確認できた。
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