2008年から2013年にかけ,全国17か所でハシブトガラス本来の生息環境と考えられる山地森林域を対象に,プレイバック法と定点調査法を用いた同種の繁殖分布調査を実施した.山地森林域では,これまでに報告されている都市周辺と比較して繁殖密度が低かった.ハシブトガラスの繁殖分布に対する人の影響を調べるため,建築物数とハシブトガラスの確認地点数を比較したところ,建築物の多い場所で確認数が多く,標高とは関係が認められなかった.本州の森林では,落葉広葉樹林よりも人工林の常緑針葉樹林で,ハシブトガラスの密度が高かった.落葉広葉樹の少ない鹿児島県屋久島の森林では,常緑広葉樹林と常緑針葉樹林の間で確認数に差は認められなかった.ハシブトガラスの生息密度が落葉樹林にくらべて常緑樹林で高いのは,巣や巣立ちビナが目立たず捕食されにくいためと考えられた.
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