都市の発展に伴い拡大する地下空間は,都市構造の多重階層の中で最も低い場所に位置するため,極端事象や巨大災害による浸水被害に対して脆弱である.そのため,地下空間を対象とした降雨および津波による浸水解析の重要性が高まっているものの,既往研究ではデータの整備・利用可能性が広域での分析の制約となっていた.本研究では名古屋市市営地下鉄を対象として,都市部における広域での浸水解析に利活用できる三次元地下鉄GISを,工事記録や施工図面をもとに作成した.また,作成した地下鉄GISデータを用いた浸水解析として,南海トラフ地震による津波浸水被害を想定した結果,海岸部に近い名港線では1mを超える津波高により路線総延長の8割に相当する区間が浸水し,名城線の伝馬町駅では隣接する堀田駅からの浸水が路線を通じて遡上するなど,空間配置と接続性による影響を明らかにした.
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