近年各地の農山漁村で寺院が新たに宿坊を創設する動きが見られ、そうした中にルーラル・ツーリズムの様相を呈するケースが散見される。本稿では、経営の中核を担う住職またはその家族をアントレプレナー(起業家)と位置付けることを試み、アントレプレナーの視点から宿坊のルーラル・ツーリズムの実態を捉えて分析考察した。その結果、①宿坊のルーラル・ツーリズムが、社会課題の解決を目指すアントレプレナーの事業継承と機会発見を契機として展開されている、②アントレプレナーシップにより再発見された寺院資源と地域資源が活用されている、③歴史的に地域コミュニティのハブとして機能してきた寺院が、地域のさまざまなステークホルダーと共同で宿坊を起点としたコミュニティ・ベースのルーラル・ツーリズムを推進していることなどが明らかになった。
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