これまでの宗教集団が、創唱者や教義や制度によって存立したように、ばらばらな人間の流動的な集まりとされていた「精神世界」にも、それを存立させる<ゆるやかな共同性>がある。<ゆるやかな共同性>とは各種のメディアによって媒介された小集団あるいはそのような小集団どうしのつながりをつくりだす力である。そのような集団においては徹底した制度化がなされることは少ないし、全国的な組織とならずに、地域的な小集団にとどまることで、強い絆を持ち続けることも多い。「精神世界」が相互に連絡を欠いたばらばらな個人や小集団の寄せ集めであるという通念に併せ、当事者の多くに抱かれているのは外部とのゆるやかな関わりあいのイメージでもある。無数の小集団が「同時多発」し、相互に「照応」しあうという関わりあいのイメージは、当事者の意識のあり方とも対応し、「精神世界」が運動としてのまとまり(<ゆるやかな共同性>)をもつ上において、重要な役割を果たしている。
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