2種の還元きれる基を有する化合物の選択還元を調べる目的で,
p-ベンジルオキシベンズアルデヒド(I),
o-(II)および
p-ベンジルオキシベンジルアルコール(III)をパラジウム-炭とラネーニッケル触媒およびそれらに塩基または酸を加えた触媒を用い常温常圧下で接触還元した。Iは両触媒でおもにアルデヒド基がさきに還元されたが,塩基を添加したパラジウムー炭触媒ではおもにエーテル結合がさきに水素化分解され,約1molの水素吸収で還元を中止した場合は好収率で
p-オキシベンズアルデヒドを得た。しかし,ラネーニッケル触媒では塩基の添加によってもあまり影響がなかった。II, IIIは塩基を含むパラジウム-炭触媒とラネーニッケル触媒により選択的にエーテル結合のみが水素化分解され,酸を含むパラジウム-炭触媒ではおもに水酸基の水素化分解がさきに起った。つまり,塩基はアルデヒドおよびベンジルアルコールの還元を抑制するとともにベンジルフェニルエーテル結合の水素化分解を促進し,酸は前者の還元をより促進するため, I, II, IIIはパラジウム-炭触媒に含まれる酸,塩基により異なる経路で反応し選択還元できることが明らかになった。また, Iの還元における塩基を添加したニッケルとパラジウム触媒の差は触媒金属自身の本質的な差によるものと考えられる。
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