「今すぐ逃げること」。2024年元日の夕刻に発生した能登半島地震で、東日本大震災以来となる大津波警報が発表され、NHKの放送では、アナウンサーが強い口調で避難を呼びかけた。本稿では、この呼びかけを含めた初動対応を5つのフェーズに分けて詳細に分析した。語尾を「〇〇すること」とする呼びかけを「念押しのことば」として定義するとともに、東日本大震災を教訓にNHKが作成した「命を守る呼びかけ」が、放送の歴史上、大津波警報発表下で初めて本格運用されたことを論証した。一方で、「日本海側で起きる津波の到達は早い」という情報については、必ずしも十分に伝えきれなかったという課題も提起した。
また、「災害関連死」を防ぐための課題についても、▼熊本地震以降に注目された避難所運営の国際基準や▼100年前の関東大震災以来、重要視されてきた「広域避難」を例に分析。今回の能登半島地震で過去の教訓が十分に生かされなかったことを指摘し、今後の災害時に求められるメディアの役割を検討した。
抄録全体を表示