マクロ経済の現象には注目すべきパターンが存在する.そのパターンは法則というよりは,複雑な系に広く観測される統計的な構造であって,ときには壊れたり,変化したりすることがわかってきた.本稿では,経済のエンジンともいえる生産を担っている企業の興亡に関わる成長に焦点を絞って,近年入手可能になってきたデータ,とりわけ企業が仕入れ・販売の取引関係を通じて付加価値を次々とつけていく生産ネットワークに関わる複雑ネットワークとそのうえでの大規模シミュレーションにも触れながら,統計物理学の考え方や手法が有用であることを述べる.
抄録全体を表示