前庭刺激が加わると, 大脳の働きは低下するという仮説をたてた. そのことを実証するために, 24例に左右交互に44℃の温度刺激を与え, 非刺激時と刺激時の大脳の働きを比較してみた. 大脳の働きの指標としては, 2桁の数字10コを, 大きい数から小さい数へ, 順に呼称するに要する時間とした. 結果は, 非刺激時にくらべ, 刺激時に呼称時間が有意に延長した. これにより, 前庭刺激は大脳の働きを低下させることが分かつた.
一般に前庭自律神経反射と呼ばれている状態を総合すると, 人間が疾走するのに適した条件を作つているのだと考えられる. 大脳の働きの低下も, その一環として理解することができる.
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