皮膚ノカルジア症において, ノカルジアの組織内顆粒を電顕的に観察し, 興味ある所見を得た.症例 : 68歳, 男性.職業は土木下水工事作業員で, たびたび足に外傷を受けていた.現症では左足内側部に3×4cmの黄褐色, 一部肉芽腫性局面が見られ, その部の病理組織漂本では真皮内に多数の顆粒とその周りに好中球・リンパ球の浸潤が見られた.顆粒はPAS染色陽性, Gram染色陽性, Giemsa染色に淡染し, Ziehl-Neelsen染色で抗酸性を示した.培養により黄橙色のコロニーを得た.この菌はcasein, tyrosine, xanthineの何れも分解せず,
Nocardia asteroidesと同定した.組織内顆粒の電顕的観察にて, 顆粒は様々な形態をした無数の菌体より構成され, 豹紋状を呈していた.個々の菌体はやや高電子密度のinner layer, 比較的低電子密度のouter layer, およびその間にelectron lucent zoneを挟んだ3層構造を呈する細胞壁と, 1層の細胞膜に包まれ, それぞれの厚さは約10および3nmと計測された.これらの構造は培養
N. asteroidesのgrowth cycleに当てはめるとlog phaseに近いものと考えられた.菌体内には, mesosomeと考えられる渦巻き状構造も核領域に接着して観察された.
抄録全体を表示