本研究では積雪寒冷地における地すべり地の水理挙動を解析するため,菅原による融雪モデルと地下水タンクモデルを統合し,状態空間モデルとして定式化した.秋田県阿仁合小渕地区を対象地とし,2018 年 6 月から 2022 年 5 月までの地すべり地の動態観測データおよび阿仁合アメダスの気象データを解析に用いた.統合モデルにより降雪と融雪を考慮した日融雪換算降雨量を推定し,これを地下水タンクモデルに入力することで,流出量および地下水貯留量を時系列的に解析した.モデルパラメータはマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC 法)によりベイズ推定した.
推定値の整合性を検証した結果,降雪および融雪期の積雪深,流出量の変動がおおむね再現され,積雪寒冷地の水理過程のモデル化に成功した. 観測値と推定値(中央値)の間の二乗平均平方根誤差は積雪深で 10.4 cm,流出量で 203 m3/sであった.
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