本研究の目的は,幼児が他者の行動から自発的に他者の行動を予測したり内的特性を推測したりするのか,また,幼児は他者の内的特性をどのように把握するのか,さらに,矛盾する行動を示す他者に対してどのように内的特性を判断するのかという3点を検討することである。幼稚園の3歳児クラスから5歳児クラスの子どもたちに二人一組で動画をを視聴してもらい,視聴しながらの自由な会話の分析と動画の登場人物についての幾つかの質問を行った。その結果,幼児でも他者の行動を見ながら,自発的に他者の行動を予測したり内的特性を推測したりしていることが示された。また,他者の行動から一般的特性を抽出して,他者の一連の行動をその特性に帰属させて記憶し,それに基づいて他者の内的特性を把握しているであろうことが示唆された。さらに,矛盾する行動を示す他者については,特定のルールで他者の内的特性を判断するのではなく,状況によって判断のルールが変化するであろうことが示唆された。
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