新しい経口用セフェム系抗生物質であるcefditoren pivoxil粒剤について4菌種感染マウスおよび小児臨床例の腸内細菌叢におよぼす影響を検討した。
Escherichia coli, Enterococcus faecalis, Bacteroides fragilis, Bifidobacterium breveの4菌種を腸管内に定着させた4菌種感染マウスに, cefditoren pivoxi 1粒剤15mg/kgを1日1回, 連続5日間経口投与した結果, 糞便中の生菌数は4菌種いずれも投与開始5日目に軽度の減少が認められた。小児臨床例における検討は細菌感染症の小児4例 (男児2例, 女児2例, 年齢2歳6か月~8歳6か月, 体重15.0~24.0kg) に対し, cefditoren pivoxil粒剤1回3.33~5.56mg/kgを1日3回, 5~19日間経口投与を行った。その結果, 1例で主要な好気性菌, 嫌気性菌が減少し, 嫌気性菌総数の著明な減少がみられたが, 他の3例においてはEnterobacteriaceaeの減少傾向が認められた以外に, 主要菌種の大きな変動はなく, 好気性菌総数および嫌気性菌総数に大きな変動は認められなかった。ブドウ糖非醸酵性グラム陰性桿菌は本剤の投与に伴い一時的に増加する場合が認められたが優勢菌とはならなかった。真菌に関しては, 他の菌種が著明に減少した1例で
Candidaが最優勢菌種となった。他の症例では2例で本剤の投与中もしくは投与後に
Candidaが増加する傾向がみられたが, 優勢菌種とはならなかった。本剤投与中の糞便中cefditoren pivoxi1はいずれの症例においても検出されなかったが, その活性型であるcefditorenは3例より検出され, その濃度は, 3.78~1,389μg/gであった。主要な好気性菌および嫌気性菌が減少した8歳6か月の男児例では, 投与中の糞便から1,172~1,389μg/gと高濃度のcefditorenが検出された。糞便中β-lactamase活性は全例で陽性を示した。以上の成績から, cefditoren pivoxil粒剤は, 他の新経口セフェム剤と同様に小児の腸内細菌叢におよぼす影響が少ない薬剤と考えられるが, 症例によっては高濃度の薬剤が糞便中に検出され腸内細菌叢が大きく変動する場合もあり, 注意が必要である。
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