『江湖新聞』は、明治前半期のオピニオンリーダー、福地櫻痴が主宰した、幕末維新期のもっとも著名な新聞の一つである。同紙は、実際に多くの文献中で言及され続けてきたにもかかわらず、これを主題とした先行研究は少なく、総じて通説に対する疑問点も多い。そこで、本稿では参考文献を紹介したうえで、『江湖新聞』が創刊された一八六七年頃の政治情勢について解説し、同紙の特徴について詳細に分析をくわえた。そして、櫻痴にまつわる「矛盾」や「変節」の問題について考察をくわえつつ、彼の回想録に依存せずに同紙を研究することの意義について論じた。
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