爪試料に含まれる元素の組成分析は誘導結合プラズマ質量分析などを用いて行われるが,得られる結果は平均的な情報であり,爪試料の面内及び深さ方向における元素分布についての報告例はない.本研究では,キャピラリーX線集光素子を搭載した微小部蛍光X線分析装置を用いて,爪試料の面内の元素分布を測定した.その結果,硫黄とカルシウムは爪試料の全体に均一に分布していたが,カリウムと亜鉛は爪の先端近くで濃化している領域が確認された.さらに,共焦点型微小部蛍光X線分析法を用いて同試料の非破壊的な深さ方向の分析を行った.爪試料内部での蛍光X線の吸収補正を行って蛍光X線強度分布を解析した結果,カルシウムは試料表面だけでなく,爪の内部にも高い濃度で分布していることを示唆する結果が得られた.
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