本稿の目的は,物語行為への批評とともに,学習者が現代の社会共同体において広めたい言説の創造を目指す古典教育実践を具体化し,高等学校で実践を行うことを通して,その学習の意義を検討することにある。
具体的な手立てとして,「をばすて山」の二つの類話を教材として扱い,それらを比較し,語り手の意図を読みとった上で,その枠組みを用いつつ現代の問題領域を問う物語創作を設定するという単元を構想した。
これらを踏まえ,高等学校二年生を対象とした実験授業を行った。その結果,言説の創造となりうる物語創作の成否は十分なものと言えないものの一定程度達成された。また,物語行為への批評については,多くの学習者で達成されたものと言える。これは,学習者がテクスト生成者の立場に立つ経験をしたことが要因として考えられる。
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