本稿は,美濃焼産地を事例に陶磁器需要減少への窯元の対応とその特徴について明らかにした.同産地では,戦後の生産拡大期における窯元の経営規模が焼成設備に反映され,大規模窯元はトンネル窯を,中小規模窯元はシャトル窯を主に導入している.焼成設備の違いは需要減少による影響に差異を生じさせ,スケールメリットが重要となるトンネル窯導入窯元の転廃業が進んだ.一方で,シャトル窯導入窯元は生産調整が容易であり,転廃業はみられるものの減少割合は小さい.現存するトンネル窯導入窯元は機械化やIT化を推進し,生産効率を向上させることで多品種大量生産体制に移行し,スケールメリットを維持した.シャトル窯導入窯元では自社の技術や設備を有効活用し,高付加価値製品の製造や多品種少量生産への移行を行った.このように,美濃焼産地における陶磁器需要減少への対応は経営規模により異なる特徴を持っている.
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