(はじめに)離島・山間僻地においては急性心筋梗塞(AMI)患者が発症した場合,患者搬送に多大な時間がかかりより早い冠動脈の再灌流を得ることが困難である.
(目的)離島・山間僻地の一次医療機関に搬入されたAMI患者に対する経静脈的血栓溶解療法(IVCT)の有効性を検討する.
(対象)北海道宗谷地区において,1997年から2001年の間,二次医療機関まで搬送に1時間以上を要する地域で発生したIVCT適応のAMI患者21名を対象とした.
(方法)最初に搬入された一次医療機関でIVCTを施行された群をIVCT(+)群,施行されずに二次医療機関へ再搬送された群をIVCT(-)群とし,発症からIVCT開始までの時間,max CPK,慢性期LVEFを比較検討した.
(結果)発症からIVCT開始までの時間はIVCT(+)群で短く(196.92±24vs.285.6±55min,p<0.05),max CPKはIVCT(+)群で低値を示した(2011.4±363.9 vs. 3640.3 ± 839.5, p<0.05).残存心機能の指標としての慢性期LVEFはIVCT(+)群で有意に高値を示した(59.75±2.78vs.50.11±4.21,p<0.05).
(結論)離島・山間僻地の一次医療機関に搬入されたAMI患者に対して,無治療で再搬送せずに当該一次医療機関にてIVCTを開始することがより有効である.
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